まぼろしのタケノコ事件
それはある日のこと……姑からいつもの野菜などのおすそ分け便がやってきたことからはじまりました。
山で採れたこごみなどの山菜や、ジャガイモなどの野菜、他にもたくさんの”これおいしいから食べてね”の優しい気持ちが詰まっていたのです。
そして、新聞紙に包まれた”ナニカ”がそこにはあったのです。
持ってみて、重さを確かめてみました。この形といい、この重さといい、これはきっとアレに違いないと、私はそう思いました。
そう、それはまさしく、タケノコ。きっと間違いありません。新聞紙に包まれていることを考えても、水煮にしたものではなく皮付きのまま。
でも、今日は予定があって夕方からでかけなければいけません。とりあえず、私は冷蔵庫の野菜室に入れておこうと思ったのです。そして明日には、アク抜きをして煮たり焼いたり、いろいろしてやろうと……。
日が変わって、まずはお礼の電話をすべきだろうと姑に電話をしました。
「お母さん、荷物届いたよ!ありがとう!」
と、いつものようにお礼の気持ちを伝えました。よかったよかったと、姑の安心した声を聞くことができました。そして、わざわざ旬の味を入れてくれたことについてもお礼をしました。
「タケノコも、ありがとうございますー。これから煮ようと思って。」
そう伝えたところ、電話の向こうが静かになってしまったのです……。何か変なことを言ったかしら、そう思ったとき姑が発した言葉は……。
「タケノコなんて送ってないよ?」
でした。わたしの頭の中には”?”がいっぱい。だって昨日確かに見たのです。形も重さも、タケノコに間違いない新聞紙に包まれた”ナニカ”を。
新聞紙に包まれていたことや、段ボールのどこへんに収納されていたかも姑に伝えてはみるものの、やはりタケノコなんて入れた覚えがないとの返事……。まさに今、姑の頭の中も?でいっぱいのようでした。電話でつながる”?”の輪。つなげたくない”?”の輪。
”?”の輪をつなげていても仕方ないので、私は電話しつつその”ナニカ”を確かめてみようと思いました。送ってくれた姑本人が入れていないと言う以上、食べ物ですらないものを冷蔵庫に入れてしまったかもしれない。それはちょっとまずかったかも、と思いながら……。
そして冷蔵庫にある新聞紙に包まれたままの”ナニカ”を取り出し、怖いよー怖いよーと、開けてみたのです……。
そしてそこにあったのは……。
まさかの大吟醸。野菜室でちょうどよくキンキンに冷えていました。飲み頃に仕上がっています。もう準備ばっちりなんだからね!ってなもんです。
気まずいながらもそのことを姑に報告します。大吟醸なら入れた、と姑もすっかりひと安心したようでした。爆笑しながら。
……昨日からずっと、タケノコ料理のレパートリーを脳内で考えていたのに……タケノコ……料理するつもりだったのに……。くっ……。
TAKENOKOのその後
タケノコ事件、いかがでしたか?さようなら土曜日、こんばんは日曜日を過ごしているmameuです。
このまぼろしのタケノコ事件の当事者は、実家のマミー(カエルが大好き)です。うちのお母さまはちょっと、いやけっこうな天然砲を持っていまして、今回はそのマミーから聞いた話です。びっくりしちゃったらしいです。そりゃそうだ。
まさかのタケノコじゃなかったやつ。そしてこの電話に出てくるマミーにとっての姑=私の祖母は、後日マミーへタケノコを送ってきてくれたんだとか。「嫁が大吟醸をタケノコだと思った、つまりタケノコ食べたかったに違いない。」そう、おばあちゃんは考えたのでしょうね。嫁への優しさプライスレス。
マミー自身が語っていたほぼそのまま、マミー目線で書いてみました。面白さあるのかな。ちょっと目新しいことしてみたかったのです。反省はしているが後悔はしていません。そう、開き直りだよ!
ちなみに私はタケノコだったら調理方法は、煮てもらうのが好きです。
繰り返しますが、 煮てもらう のが好きです。
もらう、大事。
以上です。